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【被覆防食―心の技術】
 小生、防錆・防食・表面処理関係の仕事に専門として携わるようになって、多くの先生や先輩の方々のご教示・ご指導のお蔭様により、わずかばかりはこの分野の技術や業界の有様の一端が窺えるようになったと思われた頃から、今までずっと思い続けていることがある。それは、この分野の技術の中で、特に「被覆防食技術」*1についてであるが、この技術は他の業界の様々な技術に比べ、"何と人の心の寄与率の大きいことか″ということである。

 例えば、塗装に関する一例を挙げよう。特に、現場で耳にするコトバの一つに、「塗っちゃえば分からねえ」…(塗装する側の声)、「塗られちゃっちゃあ分からねえ」…(顧客側の声)。というのがある。これは主に、塗装工程前の下地処理*2段階での話に多いものである。

 ところが、自然科学の現象というのは天地宇宙の摂理に決して逆らうものではないのです。時を経るに従って悪い仕事は悪いなりに、良い仕事は良いなりの結果が出てくるのですが……。
 大規模な工事であろうが小規模な工事であろうが、一応契約という過程を踏んで、顧客側と施工側がそれなりにその仕事の内容を理解・認識したうえでスタートしたからには、代金を払う側はそれなりの仕事をしてもらいたいと思うのは当然であるし、代金を受け取る側もそれなりの仕事で応えるのもまた当然である。
 そうして,お互い立場は違ってもそこにはモラル(moral;道徳・倫理)もモラール(mora1e;上気、やる気)もあるべきでしょう。

 「塗っちゃえば分からねえ」だの「塗られちゃっちゃあ分からねえ」等と言って、モラルやモラールのない"心"で仕事をしていては鉄(被塗装物)がかわいそうというものです。
 鉄が言っているかも知れません。「貴方がた人間様よ、もっと"哲"をもって鉄に対処して欲しい」と。

*1:金属の腐食を防止する技術(防食技術)の中で,防食したい金属の表面を何等かの材料で被覆することによって腐食を防止する技術。いくつかの例を挙げると,塗装,ライニング(ゴム,樹脂等),溶射,めっき,防錆油,塗付法……等々がある。
*2:ご存知のように,これは発生している錆を規定通りに除去しなかったり,水分・塩分・ダスト等の異物(防錆・防食性能を発揮させるためには邪魔になるもの)を規定通りに除去しなかったり……云々の問題である。要は,このような工程(作業)を好い加減(いい加減ではない)にしても,上から塗料で塗り隠してしまえば(隠蔽*3してしまえば)分からないというのです。
*3:塗料の"隠蔽力"という性能や用語を,くれぐれもこのようなコトに応用するなかれ。

<五木田 功>




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